03 February 2008

Management and Governance in Healthcare Organisations - Course Unit

 第2タームに入って最初のモジュールは、Management と Governanceについてです。 このGovernanceっていうのが、いま一ついい日本語がないなぁって思ってるんですけど、管理方法というんでしょうかねぇ。

 Clinical Governanceっていうのは、NHSの考え方の根幹をなすほどのものなので、楽しみにしています。

コースの目的は、
  1. 医療システムの組織、あるいはそのオーナーシップについて理解を深め、検証する。
  2. 医療サービスの提供や変更において、問題となっていることを理解する。
  3. 医療機関における管理体制や、戦略的開発、制御体制などについて詳細にわたって理解する。
コースのアウトラインとしては、
  1. 医療サービス&システム:3つの機関(Primary, Secondary and Tertiary care)の相互関係
  2. 医療機関の管理や調整に関するさまざまなモデル(For-profit, not- for -profit, government funded, agencies)
  3. 医療システムにおける管理:権力の分散
  4. サービス提供者や管理者の役割とその将来に向けた発展
  5. 医療機関への管理体制の導入(臨床および実務)
  6. 医療機関やシステムにおける制御
  7. マネジメントとガバナンスにおける、マネージャーと医療者の役割
  8. 戦略的マネジメントとビジネスプラン
  9. 戦略的変化の管理:医療サービスと医療機関の組み合わせ
参考文献は、
  • Baggott, R. (2004). Health and Health Care in Britain, 3rd edition, Basingstoke: Palgrave Macmillan.
  • Cornforth, C. (ed.) (2005). The Governance of Public and Non-profit Organisations, London: Routledge.
  • Drucker, P. (2006). Managing the Non-profit Organization, London: Harper Collins.
  • Ferlie, E., Lynn Jr., L. E. and Pollitt, C. (2005). The Oxford Handbook of Public Management, Oxford: Oxford University Press.
  • Gray, A. and Harrison, S. (eds.) (2004). Governing Medicine - Theory and Practice, Maidenhead: Open University Press.
  • Johnson, G. and Scholes, K. (2006). Exploring Corporate Strategy - Text and Cases, Enhance Media edition, 7th edition, Harlow: Financial Times - Prentice Hall.
  • Peckham, S. and Exworthy, M. (2003). Primary Care in the UK, Basingstoke: Palgrave Macmillan.
  • Maynard, A. (ed.) (2005). The Public-Private Mix for Health, Oxford: Radcliffe Publishing.
  • Walshe, K. (2003). Regulating Healthcare - A Prescription for Improvement, Maidenhead: Open University Press.
  • Walshe, K. and Smith, J. (eds.) (2006). Healthcare Management, Maidenhead: Open University Press.
 
 第1タームに「医療政策」、「医療サービスと質の改善」と学んできて、今度は「医療システム全体の運営方法」について学ぶということになります。

 日本では、株式会社による医療機関の運営(麻生病院や亀田病院はかなりそれに近いんじゃないかと思いますが)は今のところ解禁されていませんが、特にインドでは、国による医療体制の整備がとてもじゃないけど追い付かないということで、For-profitによるPrivate Hospitalをじゃんじゃん作り始めているということです。
 英国でも、おそらく数年以内に、Virgin group(航空、鉄道、エンターテイメント、通信業など)やTesco(スーパーマーケット)が医療サービスへ乗り込んでくるだろうと見込まれています。 おそらく医療スタッフの人件費は、相当低く抑えられるだろうと予想されているようです。 そのうち、Tesco Hospitalだのがでてくるということで、高血圧で受診してもTesco Pointが貯まる!なんてことになるんでしょうか、、あるいは、Pointで予防接種サービスとか。

 株式会社が医療を行える米国でも、For-profitの医療機関のシェアはさほど大きくなく15%前後です。 多くは、富裕層をターゲットにした医療を提供しており、まだまだNot-for-profitの占める割合が多いですね。 あとは、キリスト教などの教会といったチャリティー団体が医療を提供しているケースが多いということもあるかもしれません。 ここは、日本とは少し違いますね。

 各国の医療機関の分類と患者のアクセシビリティについて話が出たときに、やっぱり日本の状況は「かなり」特殊だということがわかりました。 
 多くの国では、高度医療機関(Tertiary care:臓器移植、心臓手術、高度外科手術など)を受診するにはPrimary あるいはSecondary からの紹介が必要になりますが、日本はそこをすっ飛ばして、患者さん自身が判断をして受診することができますから。いい面もあれば悪い面もあるでしょうね。

 中東(サウジ・アラビア、クウェート)では、質管理体制や医療保険体制などとも絡んで2次と3次の区別をかなり厳密に線引きをしているようです。日本は少し曖昧さがあるかもしれません。 
 日本では、「同じクリニックで診療をしていて、勉強をした専門医の治療と一般医の治療で、医療保険の点数(値段)が一緒なのはおかしい」という議論もあるようですが、そもそも、Primary careのレベルに臓器専門医(神経内科や循環器内科医など)がいること自体が他国では特殊な状況なので、その段階ごとにコストが決められているという視点から見ると、ごく当たり前になります。 
 Primary Careにはそれを専門としたGeneral Practitioner(GP)が育成されていることが前提となり、専門医はSeconary, Tertiary careでの医療に専念しています。時にPrimary Care Clinicに専門医外来という形で診療を行うことがあっても、あくまでGPからの紹介という形がとられているようです。
 
 日本のように、専門医資格を取った医師が開業したり、Primary careを提供しているということをクラスで話をすると「何で専門医になってるのに、GPと同じようなことをするの?というか、トレーニング受けてないでしょ?」という、「いやぁーごもっともなんですけどねぇ」という意見が出されます。 彼らにすると、「予想外」の展開のようです。 何しろ、日本の医療は「世界一の水準」ですから。
 しかし、Primary careのトレーニングを受けないで開業することは、医療のアウトカム(経済的、疫学的など)に負の影響をもたらしているのか? うーん、どうなんでしょうか? 知りたいですねぇ。

 きっちりレベルを分けたり、医者の専門性を分けたりするのと、なんとなく担当が決まっているという方法と、どちらの方が「いい医療システム」なのか?
 そもそも、そのシステムを支える人的資源のどんな資質が重要なのか。

 この辺のことを考えながら、授業を受けていきたいと思います。

 

2 comments:

Kensuke Onishi said...

公共政策の分野では、governmentの統治に対してgovernanceは共治という言葉が充てられていますよ。トップダウンなgovernmentに対して、よりボトムアップな意味合いで使われています。

Tag said...

Kensukeさん、どうもありがとう!
上から目線じゃないっていうことなのかな。
これからもっと授業があるので、このあたりを意識しながら聞いていきたいと思います。 どうもありがとう!