24 April 2008

Elegant かどうか - Lean Thinking

 ただいま、フランスはパリで開催されている International Forum on Quality and Safety in Health Care に参加しています。
 http://internationalforum.bmj.com/

 もともとは、ヨーロッパとアジアで分けて開催されていたそうです。
 BMJのMLでお知らせがきて、大学院の課題が目白押しだというのに、その魅力的な内容と大学のLecturerのお勧めもあって、急遽参加することにしました。

 1日目は、Better quality through better measurement というコースに参加し、
 2日目は、Cutting Edge research for improvement in health care、Lean thinkingという2つに参加しました。
 まだ明日もありますが、コースでの学びは順次記載していこうと思います。

 ともあれ、今日のコースであまりにも感動的なことがあったので、薄れないうちに書いておこうと思います。

 午後からのコース Lean Thinking では、Sweden, Canada, UK (Bolton-NHS England, Liverpool-NHS England, Wales-NHS Wales)の5つの地域での、実際にLean Thinkingを医療の現場にあてはめて成功した事例が紹介されました。

 Lean Thinkingとは、「作業の流れ(Flow)の中で無駄を省いて質を最高まで高める」という質改善の考え方。Toyota方式に代表される、もともとは製造業で発達してきた質改善の考え方・手法です。Leanとは、ぜい肉をそぎ落とすという意味。1980年代に、米国のResearcherがToyotaを代表する製造業を研究したあと、1990年代に米国で広まり、その後日本に戻ってきたという、逆輸入された(行って、戻ってきた)考え方です。

 この考え方を、医療の質改善にも取り入れようということで、英国でも数年前から NHS Institute for Innovation and Improvementという機関が旗振り役となって、積極的に取り入れられるようになってきました。
 www.institute.nhs.uk/ServiceTransformation/Lean+Thinking

 5つのケースでは、患者さんの待ち時間の短縮、日帰り手術のフローの改善など、目を見張るほどの改善がありましたと報告されました。
 どれも素晴らしい「Kaizen:改善」には違いないのですが、どれを聞いていても、
 
っていうか、大規模なProjectにするまえに、誰かが工夫とかしなかったのかなぁ

 という疑問がわいてきました。

 たとえば、
  •  日帰り手術では、1日平均16件の手術を行う時に、朝一番にすべての患者さんが病院に到着し、数時間待ってから手術に入る
  •  流し台の周囲に水あかがこびりついて、感染の温床となっている
  •  予備の物品置き場が乱雑で、物がどこにあるか分からない
  •  病棟の器具(車いす、点滴台、輸液ポンプなど)が一か所にまとめておかれて、ごちゃごちゃ
 こうしたことを、院内の大規模プロジェクトとしてやらないと、改善できないものなのか?っていう疑問。
 次の人が使いやすいようにちょっと気を配る、っていうことはしないのか?っていう疑問。
 汚い状態を誰かが片付けるとかしないのか?っていう疑問。

 日本の医療機関だと、看護婦さんたちが日常業務の中で、どんどん工夫していっていると思うんですけど、いかがでしょうか?
 たとえば、包交車(病室でのケアの際にガーゼや注射器、薬などをまとめて移動できるようにセットされた作業台)の脇などに手製のマルチポケットがくっつけられていたりとか、在庫置き場には戸棚ごとにラベリングされていたりとか、なんていいますか、日常的に少しずつ改善していっているように思います。

 もちろん、5つの事例では、こうしたプロジェクトを行ったことで、
  • チームワークの向上、
  • 医療者が質改善に対して積極的になる、
  • 改善することで職員と患者さんの満足度が上がる、
  • フローが改善して回転が速くなることで時間外労働短縮、
  • 収益の増加にもつながる
 という、素晴らしい結果となったことは、プロジェクトとしてやったかいがあったというものです。

 ただ、こうした質改善の試みを持続的なもの(Sustainable)としたり、プロジェクト以外の部分への質改善の広がりという観点からみると、プロジェクトに注目した質改善だけではなくて、Lean Thinkingのコアの考え方(というか、哲学?)の一つである 5-S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を組織の文化(Organisational Culture)としていくことが大事なんじゃないかなぁと思ったわけです。

 「整理・整頓」なんて、小学校の時に黒板の上にでかでかとクラスの目標みたいにして掲げられてたよなぁ。 
 そうそう、本当に小さなときから、この5つって、礼節・作法の一つとして教え込まれてきたように思います。
 物や行為がきちんと流れて、それが「美しいかどうか」というのが5Sの根底に流れているように感じます。
 竜安寺の石庭や茶室に代表されるような日本の美しさと、製造業の質改善と、一見つながらないように見えるのですが、思うに、職人さんたちの仕事に対するこだわり方や和食の下ごしらえの方法や盛り付け、お母さん達の掃除の仕方なんかにも、「美しさ」っていうのが、根底に流れているような気がしています。

 で、セッションの最後に、感想として「Lean Thinkingを、MethodsとかStragetiesとかっていう見方だけではなくて、5Sに代表される個人の態度にまで注目して、組織分化の変化というレベルまで持っていくことが、継続的な質改善(Continuous Quality Improvement)へつながる重要なポイントじゃないかと、日本人として思うんですけど、いかがでしょうか?」って聞いてみました。

 プレゼンターからも、その組織分化の変化の重要性はかなりはっきりしてきているというコメントをいただいて、さらには、座長から、「Lean Thinkingでは、Elegantかどうか、ということがとても大切だ」とまとめていただきました。

 この、Elegantかどうか、っていうこと。

 NHSなどでLean Thinkingの導入に際して失敗した原因を分析している論文で、Elegantなんていう言葉は、まず見つからない。 大抵は、システムの構造が違っていたとか、Top managementが気を配っていなかったとか。 Elegantかどうか、っていうのをどう評価するんだっていう問題があるので、はっきりさせることができないというのも、一つの理由だと思います。

 でも、このElegantかどうか、つまり、美しく洗練されているかどうか、っていうのがLeanの要だと思ってきたので、座長からこの言葉を聞いたときは、「それです!通じてる!」って思って、鳥肌がたつほど感動しました。

 セッション終了後、座長に駆け寄って話をしていたところ、さまざまな国の方々とLean Thinkingに流れているものの見方について意見交換をすることができました。
 質改善の論文を読んでいた段階では、日本の美しさっていうものは、「言っても分かんないだろうなぁ、伝わらないだろうなぁ」って思っていたのですが、長年にわたって医療の質改善に取り組まれてきた各国の先駆者の方々は、表現の違いこそあれ、日本の美しさへの理解がとても深い方ばかりでした。
 これは、かなりの驚きでした。 
 チェコ、スウェーデン、UK、USAの方々と、「英語」で話をしているのでなかなかしっくり表現できないもどかしさはありましたが、それでも、とても大きな収穫でした。

 じゃぁ、次の疑問として、「Japanisation:日本化」しないとLean thinkingは継続できないのか?
 そうだとすると、軽く2世代分の時間はかかるでしょう。

 どの国の文化にも、無駄を省くことや、時間を大切にすること、美しさについてなどの格言があるように、日本の文化と共有できる部分があると思います。 そこを足掛かりに、その文化やContextにあったLean Thinkingの導入の仕方があるんじゃないだろうか、そんな風に思います。
 

23 April 2008

天気のいい日はピクニック

 このところ、EssayだのPresentationだの、そのフィードバックが結構きつものだったりして、はぁ、、疲れたなぁと思っていたところに、クラスメートから嬉しいお誘いがありました。

 春の公園でピクニック!

 本当なら、「そんな時間があるなら、論文の一つでも読みなさい!」なのかもしれないですが、いやぁ、心が満たされるというのは、Tasksをかたずけるのにも本当に必要なことだと実感しました。

 英国の素晴らしいところの一つだと思うのが、とにかく街中に公園がたくさんあること。 春がきて、木々は芽吹いて、花が咲いて、それだけで幸せな気分になります。

 そこへもってきて、「公園に行ってピクニックしない?」っていうお誘い。 
 そりゃぁもう、「いくいく!」

 友人が大事そうに抱えて持ってきてくれたのが、バナナと山もりのイチゴと、そして温めてディップできるようになったチョコレート! 

 Oh my god!!! こんなにSweetなことって、ほかにある?! 

 友人は、いつもLogicalな議論をするのが好きで、とてもこんなSweetな発想をする人じゃないと思っていただけに、驚きです。

 
 あぁ、なんて魅力的。。。
 とってもジューシィで、それはそれは甘いイチゴでした。

 リスが走りまわり、鳩が羽ばたく公園で、イチゴをほおばりながら、お互いの国の違いや文化の違いや、なぜそういった文化背景になるのかなんていう話で盛り上がっていたところに、たまたまほかのクラスメートも通りがかって、さらに話は盛り上がる。

 政治の話や、国の開発の話、たくさん話をしました。

 私のコースのカリキュラムは、Part-time students が通学しやすいように、授業はまとめて数日で行われるので、クラスメートと実際に会って話をするという機会が、他のコースに比べて格段に少ないのです。 でも、こうしていろんな機会を作って、相手の国のこと、医療のことなどをさまざまな角度から議論するのは、本当に楽しい。
 
 これまで名前は聞いたことがあっても、地図上でどこにあるかすらも知らなかった国のことが、本当に身近に感じられるようになるし、もっともっと知りたいと思うようになります。
 その国の世界でおかれている立場を理解したり、自分の全く知らなかったところで日本との非常に強いつながりがあることを知ったり、「世界に友人を持つ」って、想像以上に刺激的です。

 私のMentorの一人は、常日頃から、たとえ同じ文化圏で育った人と交流することであっても、人を知るということは「異文化交流である」と教えてくれておりました。医師として患者さんに出会うことも、異文化交流である!と。
 本当に「異文化」で育った人たちと、自分の中にある考えを元に話をするということは、計り知れない学びがあると、実感します。

 いやぁ、難しいことは抜きにしても、本当に心が満たされました。
 
 今度は、本格的にお弁当を持って湖に行こう!
 

05 April 2008

春が来た


 Manchesterにも春がやってきているようです。
 それでも、ときに最高気温が4度なんて時もありますが。。

 街中のいたるところに芝生が植えられていて、その中の大きな木の根元などに、クロッカスやスイセンが咲いています。日本のように、小さな花壇やプランターに植えられていることはすごく稀で、多くは道端の小さな緑地や公園に群集して咲いています。 誰が手入れをしてくれているんでしょうか。
 上の写真は、いつもの校舎(Manchester Business School)の脇にある緑地で撮ったもの。
 2羽の鳥が花畑の中で追いかけっこをしていました。 かわいい。。。

 晴れた日に、芝生でお弁当なんて最高だなーって思うのですが、風がまだ冷たくてちょっと凍えそうなので、まだできません。。
 もう少し暖かくなったら、近くの川や湖に行って、散歩した後に「お弁当~!」なんてやってみたいなぁ。

 なんていう花か分かりませんが、非常にきれいな青です。吸い込まれそうな青です。







 英国でも木瓜(ボケ)の花が植えられてるんですね。
これは、教会の脇に咲いていました。
ボケってJapanese quince (Chaenomeles:Chaenomeles japonica)っていうんだそうです。
父はこの花が大好きなので、思わず父を思い出しました。
あ、父が好きなのは寒木瓜のほうだったかな?あら?




 八重の桜は咲き始めていますが、まだまだソメイヨシノ(?)のような、いわゆる「桜!」は、もう少し先になりそうです。
でもやっぱり、春は桜ですねー。 桜を見ないと春が来たような気になりません。
大学のキャンパスに桜並木があるので、満開になったら見に行かなくちゃ!

 

04 April 2008

なんて言うかなぁ。

 別にどうって事はないんですけどね。

 ← このホッチキスの止め方。

 なんて言うか、こう、「気が利かないなぁ」と思うわけです。

 ページをめくるとね、ホッチキスのところから破けちゃうでしょ。 それじゃぁ、ホッチキスで止めてる意味がないじゃん、って思うわけです。

 クラスで配られた資料なんですけどね、別に周りは気にも留めていない(様子)。
 気にとめて、「うーん、、いけてないなぁ。。」ってNegativeな気分になるほうが損してるかんじ。

 けど、もし、日本での会議とか資料とかでこんなホッチキスの止め方したら、間違いなく「気が利かない」って判断されるように思うんだけど、いかがでしょうかねぇ。

 こっちに来てから思うのが、「次の人のことを考える」っていうのを、あんまりしない気がする。
 重たいドアを次の人のために支えて待っているっていうのは、それが「礼儀だ」って決まり事みたいになっているからだろうけど、決まり事になっていないことに関しては、全くやらない。

 スターバックスでコーヒー飲んでも、ゴミはそのまま。っていうか、ゴミ箱自体が店に存在しない。(あり得ない。)
 バスに乗っても、道を歩いていても、電車に乗っていても、食べたものや新聞、ゴミをそのまま放置。最悪、ガムをそのまま吐いて捨てます(怒)

 週に何回かは、City Councilのゴミ収集車が、歩道に散らかっているごみ(チキンフライの骨、ピザのボックス、ポテトチップスの空袋、たばこの吸い殻 etc..)を集めていきます。その予算がもったいない!

 たとえば、デニッシュとか食べるとポロポロテーブルにカスがおっこっちゃうでしょ、で、なんとなく席を離れる時にナプキンとかできれいにしませんか? 食べかすをそのままにしておくのが、なんとなく引け目を感じるというか。
 けど、こっちだと、どんなに洒落たCafeでも、テーブルもソファーも食べかすでいっぱいです。

 仕事の仕方も、自分の次の仕事をする人が仕事をしやすいように、「ほんのちょっと気を利かす」っていうので、随分無駄な時間や労力が省けると思うんですけどね。ゴミの分別がいい例だと思います。

 気を利かす、気を回す、気を遣う、気に留めるっていうあたりが、ToyotaのKanban方式だったり、Leanだったりすると思うんだけど、そのあたりに触れた論文にはまだ出会ってないなぁ、そういえば。 

 え、そのあと書類はどうしたかって? 
 もちろん止めてあったホッチキスをはずして、90度回した角度で止めなおしましたよ、ええ(笑)
 

03 April 2008

ふろしき

今日は大活躍中の「ふろしき」について。

日本を出発するときに、同僚の若手医師たちから餞別としていただいたのが、大判の風呂敷。 私の大好きなSybillaのデザインで、Decoというシリーズのもの。大きさは118x118とかなり大きめです。綿でできていますが、しっかりした素材なので、少々の重たいものなら全然問題なく運べます。
プレゼントしてくれたみんな、ありがとー!重宝してます!

追加注文したのが、Grosellaシリーズの75x75のもの。

こちらに来てすぐは、なかなか使う機会がなくて、壁にタペストリーのように飾っていたのですが、すぐにその出番はやってきました。

 まず、お買いもの。
 綿や麻でできたショッピングバッグはこちらでも売っているのですが、あまり可愛くない。
 Body shopのエコバックを持ち歩いていますが、いまいちたくさん入らない。
 で、この風呂敷を持っていくことにしました。 レジでチェックしてもらったら、買い物かごの底に敷いて、そのうえにどんどん商品を入れていって、風呂敷の端をしばれば、はい!、そのまま持って帰れます。 汚れたら洗えばいいもんね。

 つぎに、お洗濯の時。
 いまは、大学の寮に住んでいるので、洗濯するときは敷地内のコインランドリーまで洗濯物を持っていかないとなりません。 クリーニング用のケースも売っていますが、最後には荷物になりそうで買うのをためらっておりました。 で、また風呂敷。 洗濯物を包んで持っていけば、中に何が入っていても見えないし、そのまま風呂敷も洗っちゃって、乾燥したらその風呂敷に包んで部屋に持って帰ればOK。

 ケーキやワインを持っていくとき。
 焼き立てのケーキを持っていくとき、ビニールだと蒸れちゃう。 でも、風呂敷なら形も自在だし、水平を保てるし、もってこい。
 さらに、ワインなんかをホームパーティに持っていくときも、風呂敷を使っちゃえば別のカバンを用意しなくていい。

 旅行の時。
 スーツケースに物を仕分けて入れる時に、ポーチとかビニールとかを使ってたけれども、ポーチが結構かさばる。で、洋服やなんかを風呂敷で包んでしまうと、スーツケースの中がすっきりして整理しやすい。ついでに、現地での買い物の時にも使えるし、「手荷物は1つまで」とかいう飛行機の搭乗の時にも、全部まとめて一包みにしちゃう。

 あとは、使わない時なんかは、プリンターとかあまり見せたくないものの上にかけておけば、カバー代わりにもなるし、Sybillaのデザインも見ていられるし、かなり気に入ってます。

 留学ときに1枚あると、なかなか便利だと思いますよ。
 

02 April 2008

お国柄 in 携帯電話


 先日まで全く気がつかなかったのですが、こちらで購入した携帯電話の文字盤に、「日本語」がないんですね。 当り前ですが。

 で、顔文字 (^-^)/~ を書こうにも、「^」が含まれていないので、書けない。 いまだに、英語でTextを打つのは慣れません。







 で、アラビア語を母国語とするClassmateの携帯電話を見せてもらったところ、なんと、アラビア文字が書かれていて、思わず写真を撮らせてもらいました。

 何度見せてもらっても、アラビア文字は全く判読できません。右から左に書くし、日本語の草書や英語の筆記体みたいに、続けて書くんですもん。
 どうみても、「デザイン」のように見えてしまいます。

 ひらがなの「て」に点が上や右にくっついた様に見えるものも、全部ちがう文字なんですよね。(文字盤6)






 うーん、やっぱり、見慣れています、こちらの方が。

 こうなってくると、ほかの言語での携帯電話の文字盤がみたいですねぇ。
 韓国語とか、ヨーロッパ言語(特に北欧)。