今日でSummer timeが終了しました。
ということで日本との時差が1時間のびたということですね。
さて、現在私はGPとしてLondonで働いているわけなんですが、日本にいたときよりもはるかにバラエティーに富んだ症状を抱えた患者さんたちがいらっしゃっています。
いわゆる風邪などの上記道炎の次に、最も多いのは、おそらく皮膚疾患。
UKに来て、えらく乾燥した気候に、湿度の高い環境で育ってきた日本人の皮膚は負けてしまうようです。
乾燥してるなーと思っているうちに、皮膚がカサカサしてきて、寝ている間などに首や足をかきむしって、気付いたら湿疹になっていたり、悪くするとトビヒのようになってしまい、「なかなか治らない」と、クリニックにいらっしゃいます。
多くの方は、ステロイドとがっちり保湿剤を使ってもらう事で良くなりますが、もともとアトピー性皮膚炎をもっているような方は、なかなか湿疹がよくなりません。
入浴後の保湿剤でも改善しない時には、バスタブに入浴用オイルなどを使ってもらいます。
次は、尿路感染でしょうか。
女性の膀胱炎症状を訴えて来られる方が、実に多い。そして、培養では、Amoxicillin耐性のE.coliが半数ほどを占めています。
日本では、患者さんが泌尿器科に行っていたからなのか、あまり患者さんの数として多いように感じませんでしたが、この数週間はおそらく毎日診察している気がします。
これも、乾燥による体の脱水も影響しているのかもしれません。
多くは女性なので、この機会にPap smear(子宮頚がん検診)を勧め、Safer sexについてなども話をします。
また、閉経後の方で繰り返すような方には、Estrogen creamなどの代替療法を紹介しつつ、性交痛や不正出血の有無、腹圧性尿失禁の有無などについても話をしていきます。
性にまつわることや婦人科のことも、話を勧めていくうちに患者さんの方からどんどん質問が出てきます。「こうした話はタブー」と思っているのは、医療者側なのかもしれません。
さらには、外耳炎。これも、日本なら耳鼻科に行くので、内科のクリニックで良く見るものではなかった気がします。
点耳薬で改善する人が多い中で、「毎日耳かきしないとだめなんです!」という方が意外に多く、かなり繰り返しています。
こうした、いわゆるマイナー科の患者さんが多いです。
他にも、打撲や骨折、捻挫なども多いですね。
こちらに来て、「家庭医ってかんじー」と思うことが多いです。
そんな中で、治療に反応がいまいちな場合、あるいは、重症で専門治療が必要と判断した際には、各科の専門医に紹介になります。
私のいるクリニックはPrivateなので、Private Hospitalの各科専門医を紹介することになります。多くの方は、旅行者保険に入られているので、ほぼカバーされているようです。
NHSの専門医の紹介であれば、おそらく数カ月は待つことになるであろうものでも、1-2週間で診てもらえます。
ちょっと難渋なのは、紹介状を英語で書かなきゃならないことですが、、、
UKの作法なのか、あるいはPrivate Hispitalの専門医だからなのか、紹介をするときちんと報告書が帰ってきます。最初の報告書には、患者さんの既往から現病歴、診察での所見、そして今後の方針が書かれています。
しかも、ほとんどの先生方は、診察の度に患者さんの状態や症状の変化、方針の変更、手術記録などを報告してくださいます。
これが、実に勉強になる。自分の振り返りには、もってこいなのです。
自分の見立てや処置は正しかったか
患者さんがどのような経過をたどるのか
どういった身体所見をとるべきだったのか
そして
さまざまな症状や状態を英語で記載するときの実例として参考になるのです。
こうした各科専門医からの詳細にわたる報告が受けられるというのは、Primary Careを担っていく上での重要な点でもあります。だって、その後どうなったのか、本当に気がかりですし、また次に同じような患者さんに出会った時に、教訓が生かされます。
UKでは、GPのクリニックが、地域で暮らす方の最初に足を運ぶ医療機関として定められているため、完全なかかりつけ制度になっています。ですから、専門医でどのような治療が行われ、どのような経過をたどったのかをGPが把握できるように報告書を書くことが、礼儀なのかもしれません。
日本では、各科専門医に紹介すると、患者さんが戻ってこなくなることが多かったように思います。それは、専門医でもかかりつけ医として継続的に治療することが日常であり、また、患者さんの専門医志向がそうさせているのかもしれません。
ただ、Primary Careを担うものとしては、日本でも、経過のすべてにわたって詳細にわたる報告書が専門医から届く制度が整備されたら、患者さんとも、各科専門医とも、非常に良好な関係が作れるのではないかと思います。
それには、報告書を書く時間、というのを確保できるような働き方を作り出さないといけないですね。
日本でも、総合医・家庭医を専門医として確立すべく、厚労省の様々な審議会で議論が重ねられ、医学会も動き出しています。
厚労省では、医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班で議論が始まりました。
他にも、以下の審議会などで、家庭医に関する資料を読むことができます。
「安心と希望の医療確保ビジョン」第6回会議議事録
第5回 医道審議会医道分科会診療科名標榜部会
医師の需要に関する検討会
また、プライマリケアを担う医療者の学会である、日本家庭医療学会、日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会は、数年以内に合併をするために議論が重ねられています。
専門医制度を生み出すだけでなく、患者さんと各科専門医との良好な関係を築き、患者さんと各科専門医から信頼されるに足る能力を身につけ、それを研鑽し続ける制度も、同時に必要になってくるように思います。
専門医を作りました、はい、終了 な、わけではありませんから。
日本には、日本の医療文化に合ったPrimary care専門医制度が必要でしょう。
世界には、家庭医を専門医に位置づけて、長い歴史をもった国々がたくさんあります。成功も失敗も、学ぶことができます。日本の家庭医制度の確立のために、UKから沢山持ち帰れるような学びを、今後も続けていきたいです。
26 October 2008
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2 comments:
皮膚の乾燥の話、治療のというより、自分個人や家族の対処として参考になります!それにしても、バラエティーにとんだ診療ができていますね。しかも専門医のきめ細かいフィードバック付き。私はやっと家庭医のレジデンシーに入ったといっても、まだ入院診療が中心で、今ひとつ外来の研修はできていません・・・。お互いに日本にたくさんのことを持って帰れるように頑張りましょう!!
familymed758さん、いつもありがとうございます。
UKに来て、より家庭医っぽい仕事をしています。ただ、急性疾患ばかりなので、継続性についてはやや問題ありなのですけれども、、
世の中が劇的に動いているときに、その国のこと、外から見る日本というのを体験するのは、きっと何か意味があるはず。見えてくることをたくさん持って帰れるように、頑張ろう!
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