15 January 2008

Appreciative Inquiry - Organisational Development

 今日は今年初めての授業でした。 明日にAssignment の提出日を控えているせいか、いつもの2/3くらいしか出席していませんでした。

 今日のお題は、Personal and Organisational Development - Appreciative Inquiry as a tool of Organisational Development。

 Organisational Development (OD)は、私にとってとても心奪われるトピックであり、このコースを選んだのもODに関するレクチャーがたくさんあるからでした。
 「変化」が唯一変わらないものである という言葉はよく聞かれることですが、この「変化」についてきちんと学びたいという欲求を、かなり良く満たしてくれる分野だなぁと思います。

 授業の目的は、3つ。
  1. To understand what is meant by Organisational Development.
  2. To explore the concept of Appreciative Inquiry.
  3. To practise an AI conversation based on individual experience.

 ODについての定義としては、Peck (2005)が書籍の中でBennis (1969)を引用しています。
… a response to change, a complex educational strategy intended to change the beliefs, attitudes, values and structure of organisations so that they can better adapt to new technologies, markets, and and challenges, and the dizzying rate of change itself.

 また、Peck(2005)はCarnevale(2003)の言葉を引用しています。
...a social technology that helps human systems remain competitive in an era where organisational operating domains are turbulent and all labour systems are wide open to the forces of change. Development means change and it requires learning.

 この最後の、Development means change and it requires learning. 
 んー、いいなぁ。 またひとつ、好きな言葉が増えました。

 この組織開発(OD)を実践に移す上での考え方に、OD cycleというのがあり、Donaldson (2005)は、7つの項目から成るCycleを提唱しています。
  1. Contract and Entry
  2. Data Collection
  3. Data Analysis
  4. Feedback on Data
  5. Negotiating Interventions
  6. Implementing Interventions
  7. Evaluation of Action
 Managerとして、あるいはOD推進者として組織に配属されたときに、まずしなくちゃならないこと。 それは、「その組織を知ること」。 当り前だろうと思われがちですが、実は、かなり多くのLeader & Managerたちが、「何をいつどうすればいいのか知っているのは、私だ。 だから、私の言う通りにすればいいんだ」という、姿勢をとってしまいがちであり、結局何もOutcomeを出せなかった、、なんていうことは、枚挙にいとまがない。 
 そして、4のFeedbackと5のNegotiationが、これまた欠けることが多いんだとか。結果に基づいて、何をしたらいいかが(Top managementなどには)はっきりしているため、現場で働く人たちの意見やほかのStakeholderとの「すり合わせ」なく、がつーんとImplementしちゃうという失敗も、多いそうな。
 実践に移す時には、これはあくまでも理論であり、すべての7つのステップを踏む必要はないけれども、大きく欠けてしまうといい「変化」がなかなか起きないようです。

 (なんだか、一昔前の「医師ー患者関係」みたいですね。 この失敗例は。)

 ODとは、組織が学びによって変化するということであり、それは、組織に属する個々人の振り返りに基づく学習を促すことで生み出されるもの、ということなんですね。

 ですので、OD cycleと、Kolb's learning cycle がそっくり、ということもうなづけます。
  1. Concreate experience
  2. Observation and Reflection
  3. Forming abstract concept
  4. Testing in new situation

 次の目的、Appreciative Inquiry(AI)とは何か? 初めて聞きました。
 喜びの問いかけ? んー? 

 このAIは、米国のDavid Cooperrider博士が、1980年に自身のPh.D.の論文の中で編み出した考え方で、1986年に書籍として出版されました。
Appreciative Inquiry : Towards a Methodology for Understanding and Enhancing Organisational Innovation.

 定義としてCooperrider博士は以下のように記しています(2005)
the cooperative, coevolutionary search for the best in people, theirorganisations, and the world around them
AI assumes that every organisation and community has many untapped and rich accounts of the positive - what people talk about as past present and future capacities, or the positive core.
 これもCycleになっていて、中心にAffirmative topicがセットされます。
  1. Discovery: Appreciate "the best of what is"
  2. Dream: Imagine "what could be"
  3. Design: Determine "what should be"
  4. Destiny: Create "what will be"
 ODとAIの違いとしては、ODが「何が(どこが)まずいか」からスタートするのに対して、AIは「何が(どこが)素晴らしいか」というところからスタートします。 どちらも、「改善、発展させる」ということに変わりはないのですが、ODがどちらかというとNegativeからスタートするのに対し、AIはPositiveから入っていきます。
 AIをうまく運用するには、Empowermentが大前提であり、批判のない安全な場(学習でいうところの安全な学びの場のようなもの)、Win-Win situationに持っていくという、LeadershipやCoachingのテクニックが必要とされます。 もちろん、トレーニングが必要ということ。

 組織変革をする上での考え方で、かなりの大きなParadigm shiftを要求されますが、実際にNokiaやHewlett-Packard、British AirwaysなどでAIを用いて大きな成果を上げているといわれています。

 おおぉ! まさに!
Reality can destroy the dream; why shouldn't the dream destroy reality? --George (Augustus) Moore (1852-1933)


 今日も、目から鱗が「バリバリ」落ちました。 
 いやぁ、新しいことを知るって言うのは、楽しい!

 これって、組織を相手にしたカウンセリングみたいなもんだなって。
 カウンセリングの手法の一つに、「今の自分を丸ごと受け入れて、とりあえずOKを出して、そこからスタートする」というのがあります。「あれがダメだ、これができない」と自己価値観の下がってしまった人に、ダメなところがあっても、できなことがあっても、そんな自分でいいんですよって、まずは自分自身を受け止める。受け止める上での、条件(あれができたらOKなど)は、一切なし。受け止めて認めた上で、さらにもっと自分を好きになるためには、こんな障害があるから、じゃぁ、それをどうやったら乗り越えられるだろう?って考えていく方法です。

 あるいは、「いい子供の育て方」みたいな感じ?
 スウェーデンの中学校の教科書 「あなた自身の社会」というほんの中の詩の一部とそっくり。

-- 引用開始 --
 【子ども】  ドロシー・ロー・ノルト

批判ばかりされた 子どもは
非難することを おぼえる

殴られて大きくなった 子どもは
力にたよることを おぼえる

笑いものにされた 子どもは
ものを言わずにいることを おぼえる

皮肉にさらされた 子どもは
鈍い良心の もちぬしとなる

しかし、激励をうけた 子どもは
自信を おぼえる

寛容にであった 子どもは
忍耐を おぼえる

賞賛を受けた 子どもは
評価することを おぼえる

フェアプレーを経験した 子どもは
公正を おぼえる

友情を知る 子どもは
親切を おぼえる

安心を経験した 子どもは
信頼を おぼえる

可愛がられ 抱きしめられた 子どもは
世界中の愛情を 感じとることを おぼえる
-- 引用終了 --

 クラスでのディスカッションはとても面白かった。

 特にクリスチャニティの強いところでは、「人間には原罪がある(アダムとイブが楽園を追放された)」つまり、もともとダメなところからスタートしている。だから、とっても自己価値観が低いんじゃないか。だから、こういうSelf-confidenceとMotivationを上げていく方法が、重要になってくるんじゃないか。

 とか、

 アフリカではAIは広がりにくいよ。だって、自分たちは「結構イケてるんじゃん?」ってなったら、そこに満足して十分Happyだから、先に進まなくなっちゃうもん。それじゃぁ、何も変わらない。

 あるいは、

 自分の部下が、Logicを好む時には、AIは使いづらいんじゃないか。 Dreamを出したところで、現実的じゃないと、批判して終わってしまうのでは?

 とか。

 うーん、面白い。個人の学習や組織の変化、あるいはLeadershipやManagementは、その置かれているContextの上に成り立つので、当然背景となる文化を重要なものとしてとらえる必要があるよね。 

 翻って、日本はどうか。 特に最近は、あらゆるところでのバッシングが横行している感じです。
 あれができてない、これもダメ。
 日本人は英語が苦手というStigmaから始まって、学校教育の低下、政治の汚職、行政の怠惰、医療の質の悪化、警察の失態などなど、、 新聞紙面はBlamingばっかりかも。
 そりゃぁ、自信もやる気もなくなっちゃうなぁ。 うつ病も、そりゃぁ増えちゃうよねぇ。
 
 教育指導法でも、「褒める」というところで、とたんに「なかなか、うまくできないもんですなぁ、、」。 
 認める、褒める、高めあう、学びあうって、大事だって分かっちゃいるけど、一度批判的な中に身を置いてしまうと、なかなかシフトするのは難しい。

 それで、「品格」なる、自己鍛錬や自己認識に、振り子が揺れているのかな。

 うー、、ダメ出し、いっぱいしてたなぁ、、、
 ダメ出しされた方、ごめんなさい。
 自分も、反省です。。(でも、そんな自分もOKってとこからの、反省!:) )
 

*参考文献
Peck, E (ed.), (2005). Organisational Development in Healthcare(Radcliffe, Oxford)
Walshe, K and Smith, J (eds.) (2006). Healthcare Management (Open University)
Whitney, D (2005). Appreciative Inquiry: a positive revolution in change
Watkins J and Mohr, B (2001). Appreciative Inquiry (San Francisco)
Lewis, S, Passomre, J and Cantore, S (2008). Appreciative Inquiry for Change Management (London)

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