24 December 2008

誕生日とスクリーニング - BMJから

 今週号のBMJが届いてびっくり。
 いつものBMJの表紙は、その号の特集をイメージした現代的なデザインが多いのですが、今週号はナイチンゲールが表紙を飾り、まるでニュース関係の週刊誌の様です。
 しかも「BMJ!」 びっくりマークつきです。
 http://www.bmj.com/content/vol337/issue7684/cover.gif


 ちょうど、今働いているクリニックにおいて、子供たちの予防接種率をどうにか上げられないかなぁと考え、ダイレクトメールや携帯のText messageでのリマインダーなんてどうかなぁなんて思っていたところ、スクリーニングを促す事に関してのRCTが出ていました。

 G. Hoff and M. Bretthauer. (2008). Appointments timed in proximity to annual milestones and compliance with screening: randomised controlled trial.BMJ.337(7684). P1444-1446.
 Available at: www.bmj.com/cgi/content/full/337/dec17_2/a2794

目的:
 大腸がん検診のための受診率は、年間のマイルストーン・節目(誕生日、クリスマス、正月)を使うことで向上するか。
デザイン:
 Randomised control trial
セッティング:
 ノルウェーのOslo(urban)とTelemark county(urban & rural)
対象:
 成人12960人 (64.7%)
メインアウトカム測定:
 各週の受診率と予約を入れた月での受診率
結果:
 12月の受診が最も多かった(72.3% v 64.6%, p<0.001)。
 誕生日の週に案内を受け取った人、あるいは、誕生日の翌週・翌々週に予約を入れた人の受診率が高かった(67.9% v 64.5%, P=0.007)。この傾向は、特にOsloの都市部に住んでいる人に強かった。Multivariable logistic regression modelで解析すると、受診率が向上するのは、誕生日の週に案内を受け取るか、誕生日の翌週・翌々週に予約を入れること(odds ratio 1.15, 95% CI 1.03-1.28)ないしは、スクリーニングの予約を12月に入れること(odds ratio 1.45, 1.16-1.82)。
まとめ:スクリーニングの受診率は、12月か受診者の誕生日付近が多く、特にこの傾向は都市部で強い。受診案内送付のタイミングを図る上で、通年の節目を使うことがスクリーニングプログラムのコンプライアンス改善に繋がる可能性がある。

 なるほどー。確かに、誕生日やお正月など、節目で色々振り返るものです。
 あー、年を取るのねーって感じで。
 その振り返りついでに、体にも目を向けてね!ってことですね。

 本文中に、Limitationとして、ノルウェーの大腸がん検診受診率が、UKや諸外国(日本は記載なし)よりも高い(70-80%)ので、ほかの国に適応できるかどうか一般化が難しいと書いてありました。
 日本では、職場検診などがあるために、特定の月(年始の1月2月や、春や秋)の検診を済ませてしまっていることもあります。ただ、主婦や学生、アルバイト、あるいは退職者などの場合はそのプログラムから漏れてしまうので、女性やパートタイムで働いている人に関するスクリーニングは、やってみる価値がありそうです。

 以前働いていた医療生協の病院でも、誕生日月の検診を促しておりました。
 直感でやっていたことに、根拠は後から付いてくる、という感じです。
 んー、やっぱり、日本の検診データをもっと有効活用したいなぁ。
 びっくりするような「宝物」がまだまだ沢山隠れている気がします。

 で、この結果をどうやって現場に落とし込むかが次の問題。
 いいEBMがあっても、現場で生かされて患者さんに届かなければ意味がない。
 それを考えるのがHealthcare Administrator/Managerの仕事。
 現場で使ってみて、さらにいい方法がないか、改善できればなお素晴らしい。

<ステップ>
 まず、疾病や症候、問題のターゲットを絞ってみる。
 あるいは、スクリーニング検査、予防関連情報でもよさそう。
 で、(1)紙でも電子カルテでも、患者さんの誕生日と年齢、性別、連絡先をデータベースから引っ張りだしてくる。
 で、(2)絞ったターゲット、ないしは、年齢ごとに推奨されるスクリーニング検査・予防関連情報のセットとリンクさせる。
 さらに、(3)それを毎週・毎月自動的にお知らせする仕組みづくり。
 しかも、(4)コスト(人的・物質的・金銭的など)がかからず、出来たら環境に優しいなら素晴らしい。
 (追加するなら、UKの郵便事情にあまり左右されたくは、ない。論文でお勧めの12月に予約を取るために郵便を送るなんて、郵便物がどっか行っちゃう危険性が高そうですし。)
 (5)もし、改善率を探るなら、当該患者さんがスクリーニングなどを実施したら、それを記録しないと、、それのコストも考えないと。

<対策>
 地域の中で、何が問題になっているか、どこを改善したら患者さんにメリットが大きいか、もう一度洗い直すことが必要そう。
 もし、子供のワクチン接種をターゲットにするということであれば、何が接種率低下のバリアになっているのかを洗い出さないと。リマインダーの手紙が効果的かどうかが定かではない、あるいは効果的ではない、ということであれば、別の方法を考えないといけない。
 (1)現在は紙カルテ運用だから、これまでのカルテをひっくり返すか、これから受診する方の基礎データを蓄積するか。あるいは、会計で使っているデータを使うか。
 (2)予防接種は年齢別推奨のガイドラインはある。年齢別の検査項目については、参照する国(日本、UK、US他)によって幅がある。あるいは、当院独自の検診項目も絡んできてしまうかもしれない。セットさえできてしまえば、リンクさせるのはそんなに大変じゃないような気もする。
 (3)(1)でのデータさえ一覧表になっていれば、ラベリングなどは簡単。あとはプログラムを組んでもらえば、さらに効率的。でも誰が?
 (4)Managementに加えて、事務、看護師さんたちの協力が不可欠。チームを作りたいなぁ。紙やインク、郵送代がどれくらいになりそうか、ターゲット、ないしは該当患者数から概算が必要。メールや携帯Text messageなら、環境にも金銭的にも優しい。
 (5)紙カルテであれば、裏表紙などに記録スペースは作れそう。それのデータベースも作らないと。
 
<最初の一歩>
 PDSA cycleに持っていくために、とりあえず、自分の患者さんだけでも、まずは現状調査をしてみて、スタッフにも聞きとり開始。そのあとに、Planを練ると。
 現状調査&チームづくり&Managementとのネゴシエーションを同時進行。
 あとは、もう少し根拠がほしいので、論文探し。

 さて、どうなっていくかしら。

No comments: